どうも、カタカナことカタオカカナです。
いかがお過ごしでしょうか。
水曜日は芸能世界の考察。
今回は、不思議と見てしまう番組の話。
おもしろいかどうか分からないけど見てしまう番組
以前、伊集院光がラジオで「おもしろいかどうかわからないから見てしまう番組がある」との趣旨でNETFLIXのミッドナイトゴスペルをあげていました。
ミッドナイトゴスペルはアニメ番組の体を取っているインタビュー番組で、画面上ではゾンビを倒しているけど、せりふは瞑想や精神の話になっているかなり謎な番組です。
私もたまたま第一話を見て、よく分からないから第二話も見てみるか・・・と思っていたところだったんですよ。
そんなやつは自分ひとりくらいだと思っていましたが、意外と仲間がいて驚いたのでした。
よく分からないけど見てしまう「世界の現実旅行」
そんな「おもしろいかどうかわからないから見てしまう番組」をひとつご紹介したいと思います。
同じくネトフリ作品である「世界の”現実”旅行 -DRAK TOURIST-」です。
世界中にある悲惨な出来事があった場所、オカルトな場所、危険な場所等を「追憶の場所」として旅するドキュメンタリー番組です。
旅人は、一般の旅行者ならまず足を踏み入れない場所ばかり巡ります。
例えば、カルト宗教の教祖のいる街。戦争体験ができるイベント。死にまつわるあらゆるものを集めた博物館。殺人鬼ゆかりの場所をめぐるツアー。
上のラインナップを見ると、ははーんなるほどなるほどサブカル巡礼ツアーみたいなもんですねと思うかもしれません。
でもちょっと違うんですよ。
第2回は何と日本が選ばれています。
日本にある「追憶の地」
日本に巡る場所なんてあるの?と思いませんか。
私もそう思っていました。
でもね、あるんですよ。
旅人が選んだのは3ヶ所です。
福島第2原発周辺。
富士の樹海。
軍艦島。
私、福島が選ばれたことに大変衝撃を受けました。
しかも旅人が勝手に巡るのではなく、原発周辺をめぐるツアーが存在し、それを利用して取材していくのです。
しかもツアーには世界中から参加者がいるんですよ。
この時点でかなり複雑な心境になります。
福島は世界の目から見るとすでにダークツーリズムの対象になっていて、「誰も近づかない場所」として認識されているのです。
みんな放射能計を片手にツアー参加しまして、原発の近くや立ち入り禁止区域などを巡ると、時折放射線数値が危険水域まで上がることがあるんですね。
始めは「わあ!ここはこんなに高い!」と騒いでいた参加者が、途中から「え・・・ずっと高いままやん、これ大丈夫じゃないよね?」としーんとなっていくんですよ。
チェルノブイリより数値が高いぞ!となったら、そりゃヒヤリとします。
最後にはみんなぐったりして、早く帰りたい・・・となっていく。
その過程がとてもリアルで。
この反応は外国人だからではなく、我々日本人にも当てはまると思うんですよ。
当該地に住んでいない人からしたら、福島原発事故はどこか遠い場所の話であり、どうしても現実味が薄いのです。
しかし実際に踏み入れてみると、放射能に汚染された地域は確かに存在し、自分に影響を与えてくる。
津波で押し流された家々、シートをかぶせられ累々と並ぶ汚染土、立ち入り禁止の柵。
非現実的な風景が、まぎれもなく現実であるという現実がひたひたと押し寄せてくるのです。
私たちは福島を無意識のうちに「追憶の場所」として意識から封印してしまったのではないかと考えさせられてしまいます。
同様に、富士の樹海だって他から見ればおかしな場所なんですよね。
もし外国に自殺者が集まる森があるんだよと聞いたら、なにそれ怖いねどうなってるのと感じると思います。
でも富士の樹海には感じません。
きっと初めて聞いた時は怖いと思っただろうけど、すでに意識に馴染んでしまって当たり前に感じているのです。
軍艦島なんて、旅人から「追憶の旅には最高の行き先」と言われてるんですよ。
でも、私たちは軍艦島を気にかけることなく暮らしています。
自分の当たり前は当たり前じゃない。誰かから見たらおかしい。
当たり前が当たり前じゃないって怖いじゃないですか。
この番組を見ていると、当たり前をゆっくりと引っぺがされ、そこに恐怖を注入されていくような気分になって薄ら寒くなります。
ダークツーリズムは「死を覗き見する旅」
このダークツーリズムの行き先全てに死が関わっています。
ケネディ暗殺の地はすでに観光化され、過去の死で飯を食っている人たちがいる。
殺人者ゆかりの地を巡りながら、自分は安全だと分かったうえで死を観賞する。
密航者ツアーや戦争体験イベントに参加して、擬似的に命の危機を体験してみる。
この番組は人間と死のかかわり方を紹介していると言い換えられるかもしれません。
観光化された死、お金を払って体験する死、殺し屋、死の街、死の森、死の島・・・
不謹慎と感じられるツアーが存在できるのは、興味を持つ人がたくさんいるということです。
番組を見ていると、いつしか「人間の最大の興味は死にある」と思い至ります。
多かれ少なかれ、人間誰しも死について考えますよね。
理解しようする人もいれば、遠ざけようとする人、茶化してごまかそうとする人。
私のように死にまつわる番組を見る人もいる。
死を覗き見したい、でも絶対安全安心な場所からじゃないと見たくないと思うのが人情です。
その願望を叶えるのが各地のツアーであり、この番組であるのでしょう。
だから不思議と見てしまう。
当たり前をひっぺがされて震えると分かっていても見てしまう。
つまるところ、死より偉大なエンタメコンテンツはないのかもしれません。
最後に
「世界の”現実”旅行 -DRAK TOURIST-」は、面白いから見てみてと誰かに勧めることはとてもできません。
全部見終わった今ですら、正直なところ、面白いのかどうかもわかりません。
ただ、今になって世界の「現実」旅行というタイトルにうならされています。
死ほど現実的で非現実的な存在はありませんもんね。
見た後はなんともいえない気分になりますので、本当に気が向いたときにだけ再生ボタンを押してもらえたらなと思います。
今日もここまでお読みいただいてありがとうございました。
それではまた明日。